先日18歳の女性から将来の進路についての相談を受けました。SDGsや気候変動問題に携わる「グリーンジョブ」につきたいというものでした。「グリーン・ジョブ」というのは、どういう仕事のことを指すのでしょうか?
グリーンジョブを選ぶ人が増えている
Z世代は環境問題や人権などの社会課題に関心がある人が多いというのは、世界中の傾向のようです。
それで、生計を立てるための仕事に関しても、ただお金を儲けるためではなく、自分の興味のある分野で働きたいという人が増えています。
これは新卒での就職もそうですが、すでに何らかの職業についている人でも同様です。
2021年のGallopの米国での調査では、就職する際の会社選びでその企業の環境に関する履歴を考慮に入れるかどうかの質問に「イエス」と答えた人が69%という結果でした。
世界中のビジネススクール29校の学生2000人を対象にした2021年の調査によると、環境に対する責任を果たしている企業で働くためなら、減収を受け入れるという学生が51%いました。
SDGs講師講座受講生の就活
グローバルSDGs講師講座受講生の中にも、大学卒業にあたり「仕事を通じて社会貢献したい」という志を持って仕事を探した方がいらっしゃいます。
とはいえ、その女性は就職活動中にたくさんの会社から「そのような期待には応えられない」と断られたそうです。
「今の日本では、社会に貢献したり、持続可能な未来を描くよりも、即戦力になる人材しか必要とされていないのか」と愕然としたということ。
それでも彼女は「ただ生計を得るだけの仕事」で手を打つのではなく、粘り強く職探しを続けました。
そして、少し視点を変え、マーケティングを通して自分のやりたいことをするという方法もあるということに気づきました。その結果、自分の信じる理念をデジタルマーケティングを通して社会全体に広げることのできる会社に就職しました。
今は、顧客である大手企業がSDGsや気候変動問題の取り組みを行う事業をデジタルマーケティングを通じて担当しています。
大企業のマーケティングの仕事なので、たくさんの人の目に留まる事業に携わることができ、より広い影響を与える可能性を実感できると、生き生きと話してくださる姿が印象的です。
グリーン・ジョブって何?
LinkedInの2022年の調査によると「グリーンジョブ」の募集広告は2015年以来毎年8%伸びています。
とはいえ、そもそも、この「グリーンジョブ」というのは具体的にどんな職業について言っているのでしょうかか。
「グリーン・ジョブ」とは、もともとは2007年に国際労働機関(ILO=International Labour Organization)が提唱したもの。
一言で言うと
「環境に対する影響を持続可能な水準まで減じる経済的に存立可能な雇用」
持続可能性の立場から、既存事業を転換したり、新規事業を創出したりすることで、「環境」と「雇用」を同時に守っていく職業を指すということです。
と聞いても、何だかざっくりしすぎていて、よくわからないという人もいるかもしれません。
具体的な職種としては再生可能エネルギーをはじめとする脱炭素産業、廃棄物管理やリサイクル産業、持続可能な農業や漁業、環境保護や生態圏の創出・改善・復元にかかわる仕事などが頭に思い浮かぶ人が多いでしょう。
とはいえ、「グリーンジョブ」の概念は絶対的なものではなく、時代とともにその範囲や種類が進化してきています。
グリーンだけでなく、ディーセントであること
1999年に国際労働機関(ILO)は、「グリーンジョブは、環境保全・環境維持に貢献するだけではなく、ディーセントワーク(Decent Work)の要件を満たすべきだ」と提唱しました。
ディーセントワークは「働きがいのある人間らしい仕事」ということ。
SDG8の目標「包摂的かつ持続可能な経済成長及び生産的な完全雇用とディーセント・ワークをすべての人に推進する」として掲げられているものと共通していますね。
「グリーン・ジョブ」を狭い定義で使うのではなく、広く環境や持続可能な社会に貢献するための仕事だと考えれば、SDGsを広めるためのデジタルマーケティングも、SDGsを人に教えたり広めたりするための講師やコンサルタントの仕事も「グリーン・ジョブ」だと考えることもできます。
また、ここで忘れたくないのは、そのような仕事が「ディーセントワーク」の要件を満たすべきであるということです。
働く人々一人ひとりが快適な職場と雇用条件を与えられ、仕事を通じてやりがいを感じられることが大切。
そのような人たちがいきいきと働く社会があってこそ持続可能な世界が実現すると信じています。