G7サミットが5月19日から21日まで広島で行われました。サミットでは経済や政治をはじめ世界的な課題について話し合われますが、その中でも国際的な目標であるSDGsについても取り上げられ、コミュニケ(サミットの成果をまとめる文書)にも要点がまとめられています。
G7サミットとは
G7サミット(主要国首脳会議)はフランス、米国、英国、ドイツ、日本、イタリア、カナダ(議⾧国順)の7か国及び欧州連合(EU)の首脳が参加して毎年開催される国際会議。ちなみにG7は「Group of Seven」の略です。
主要国による首脳会議は1975年にパリで6か国によって開催され、その後カナダが参加してG7に。冷戦終了後にはロシアも加わりG8となりましたが、2014年ロシアによるクリミア併合によりロシアは除外されたまま。
G7サミットでは、世界経済や地域情勢など様々な地球規模課題について、自由、民主主義、人権などの基本的価値を共有するG7各国の首脳が意見交換を行い、その成果を文書にまとめ公表します。
G7広島サミット
G7サミットは主要国が持ち回りで開催し、おととしはイギリス、去年はドイツが舞台でした。
今回、日本が担当となるG7サミットは、広島で開催することとなり、岸田首相は被爆地から全世界に核廃絶に向けたメッセージを出したいという意向を示していました。
サミットでは、各国首脳による原爆資料館訪問、被爆者との面会、原爆慰霊碑への献花が行われ、被爆の実相についての理解と核兵器による惨禍を二度と起こさないという認識を改めて共有することができました。
さらにウクライナのゼレンスキー大統領もサミットに参加し、ウクライナ問題を始めとする世界平和、核兵器のない世界に向けての取り組み、世界経済・金融・持続可能な開発、気候変動、エネルギー問題などについて広く話し合いが行われ、その成果が「G7文書広島コミュニケ」として共同で宣言されました。
G7広島コミュニケにおけるSDGs
G7においては、SDGsの各目標に関連する世界的な取り組みについても話し合いの場が持たれました。
例えば、初日には気候危機に対処し2050年までにネットゼロを達成するための「G7 Clean Energy Economy Action Plan(G7クリーン・エネルギー経済行動計画)」が発表されました。
また、パリ協定の目標達成のために気候資金へのコミットメント(2025年までに2019年比で適応資金供与を倍増、損失と損害に対処する基金等)についても活発な議論がありました。
G7文書広島コミュニケにおいては、SDGs項目が設けられ、SDGs達成に向けた進捗の遅れを反転させるための取り組みについて述べられています。
具体的には下記の取り組みを表明しています:
- 今年9月にSDGサミットを行う
- 国際協力の再活性化のために持続可能な開発のための2030アジェンダとアディスアベバ行動計画(AAAA)を実施する
- 政府開発援助(ODA)や民間金融資産をさらに活用する
- 「債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)を越えた債務措置に係る共通枠組」の実施を改善するためのG20の取組を支持する
- 「気候変動に対する強じん性を取り入れた借入条項(CRDC)」を支持する
詳しく知りたい人はG7広島首脳コミュニケの英語原文とその日本語訳(仮訳)が出ていますので下記を参考にしてください。
G7広島コミュニケのSDGsに関する項目の抜粋は下記の通りです。
11. 我々は、SDGs達成に向けた進捗の後退を反転させるために、主導的な役割を果たすことを決意する。我々は、2023年がSDGs達成に向けた折り返し地点であることを認識しつつ、9月のSDGサミットの重要性を強調し、成功に向け野心的に貢献する。
我々は、国際協力を再活性化し、多国間主義を強化することへのコミットメントを改めて表明する。我々は、持続可能な開発のための2030アジェンダとアディスアベバ行動計画(AAAA)の実施を加速し、その実施に当たっては地域主導の開発を通じたものも含め、包括的かつジェンダー分野を変革するような方法で行う。我々はまた、誰一人取り残さない社会の実現を目指し、新しい時代の人間の安全保障の概念を推進する。
我々は、グローバルな課題に取り組む上で、開発協力と国際的なパートナーシップが果たす重要な役割や、国際的なパートナーとの連帯の必要性を強調する。我々はまた、持続可能な開発のための資金ギャップに対処するために、既存の資金の効率的な使用及び国内資金の更なる動員並びに民間金融資産の動員を求める。我々は、一部の国が採用している国民総所得(GNI)に対する政府開発援助(ODA)比0.7%目標などのそれぞれのコミットメントの重要性を認識し、革新的資金調達メカニズムを含むODAの増加とその触媒的な利用の拡大のための継続した取組の必要性を強調する。
12. 我々は、債務持続可能性に対する深刻な課題がSDGs達成に向けた進捗を損なっており、低・中所得国がロシアによるウクライナに対する侵略戦争やより広範なグローバルな課題から偏って影響を受けていることを引き続き懸念する。我々は、こうした国々の債務脆弱性に対処する緊急性を再確認し、参加者に明確性を与えながら、予測可能かつ、適時に、秩序だった方法で連携した「債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)を越えた債務措置に係る共通枠組」の実施を改善するためのG20の取組を完全に支持する。
我々は、IMF理事会による、ガーナに対するプログラムへの最近の承認を歓迎する。
共通枠組を越えて、中所得国(MICs)の債務脆弱性は、多国間の協調によって対処されるべきである。この点において、我々は、フランス、インド及び日本の3か国の共同議長の下、スリランカのための債権国会合が立ち上げられたことを歓迎し、MICsの債務問題に対処するための将来の多国間の取組の成功モデルとして、迅速な解決を期待する。我々はまた、民間債権者が、措置の同等性の原則に沿って、公平な負担を確保するために、債務措置を少なくとも同程度の条件で提供することの重要性を強調する。
我々は、気候変動の影響に直面する債務者に対するセーフティネットを強化するために、「気候変動に対する強じん性を取り入れた借入条項(CRDC)」の発展を歓迎する。
我々は、この論点に関する我々の財務大臣による作業を歓迎し、より多くの債権者が融資契約にCRDCを組み込むことを奨励する。債務データの正確性と透明性を高めるため、我々は、全ての公的二国間債権者が、債務データの正確性の分野におけるG20のイニシアティブを更に前進させることを含め、債務データ突合のためのデータ共有の取組への参加を促す。