グローバルSDGs講師育成講座受講生のレポートを紹介します。
Lesson 15の課題:
イギリスで行われているSDGsへの取り組みの中で、自分がいいと思っているもの、参考にしたいものについてまとめる
イギリスは、レッスンの冒頭にあったようにSDGs要素を含んだ活動が既に根付いています。Oxfamやキャンサーリサーチのチャリティ団体や、当時チャールズ皇太子であった時に設立したオーガニックブランドも印象的です。
個々に活動の場を広げるイギリスにおいて、今日は、イギリスのファッション業界で起こった動きについて紹介したいと思います。
時代背景として、業界には飛行機のLCCのような、低価格でトレンドを追うァッションビジネスが生まれました。「ファースト・ファッション」です。安価で都合の良い選択に、消費は上向きました。大量生産に、最後は大量廃棄という結末を迎えるということになっていても、その工程や仕組みについて警鐘を鳴らすことなく過ぎていました。
○1980年から比較して、人々は3倍以上の服を購入している
○毎年千億もの服が作られ、その3/5が購入した年に捨てられる
○ファッション業界を国に例えると、CO2排出量は、中国、アメリカに続いて世界3位
○海洋プラのごみの約35%は、合成素材の衣類の洗濯が原因
ラグジュアリーブランド業界でも、年間に数々のコレクション発表があり、常に何かを創出することで成り立っていたのです。
このような大量消費の時代が定着していた2017年、4月、原材料から製造過程までサステナブルなコレクション「No Frills」を立ち上げたデザイナーがいます。Mother of Pearlのクリエイティブディレクター、エイミー・パウニーです。
A mission to create a sustainable collection from fields to finished garments and transform the way we engage with fashion.
彼女の生い立ちから、環境意識は高く、業界でのビジネス形態に嫌気がさしていたそうです。そんな業界を一度は本気で退こうとした思いを、業界に留まり、「行動を起こして、少しでも方向修正したい」という原動力に変えました。
彼女とチームによる、服の原材料の調査が始まります。すると、一つの服ができるまでに、原産地、加工地等を含めると数か国にもわたっていたことが明らかになりました。さらに、その工程は、時に劣悪な状況もはらんでいたのです。
大量生産や流通において、児童労働、強制労働は前提のもと、動物のウェルフェアさえほとんどない、痛みと犠牲がある状況でした。
SDGsゴール12:つくる責任・使う責任
13:気候変動に具体的な対策を
エイミーの行動は、先の2つに焦点が当てられました。そして掲げられたミッションは、
Transparent supply chain
Organic natural materials
Social responsibility
Respect to animals
A low carbon foot print……and great quality!
エイミーのその情熱と成し遂げる力は、底知れなく、前途多難な条件を整え、コレクションは完成します。(詳しくは、映画「ファッション・リイマジン」をご覧ください)
映画『ファッション・リイマジン』公式サイト 9月22日(金)公開 (flag-pictures.co.jp)
しかし、これで業界の風向きは変わったわけではありません。ただ、きっかけを見事につくり上げ、その流れの軌道をつくったといってもいいでしょう。
現に現在、業界において様々なサステナブルな取り組みが始められています。ファースト・ファッション業界でさえ、リサイクル素材を使った服の生産、要らなくなった服の回収など、生産して終わり、というこれまでのスタイルを変えました。
消費者も同様に、購入への意識に新たな情報を導入しています。
タイミング的にも、新型コロナウィルスが蔓延し、世界は閉ざされます。「エッセンシャルワーカー」という言葉を耳にするほど、これまで気にしなかった生活の対象に注目が行くようになりました。そして、これまでの生活様式を見直す機会にもなりました。
気候変動を及ぼす要因は、身近な選択から解決できそうです。
スーパーで最近目立つ販売法で、生産農家を写真で紹介する方法を取り入れています。口に入れる消費社会に動きがあったのと同様に、身に着ける消費社会にも、こうした生産の可視化が導入されると、SDGs12のゴールである、「つくる責任・使う責任」に、より寄り添った行動を起こせる気がします。
山口真苗
ファーストファッションが手軽に手に入るようになり、私も「安いから」という理由で不必要なファッション用品を買ってきた過去を今になって反省しているので、このレポートにはとても共感しました。イギリスでは「新しい服を買わない」宣言をしている人も多く、私もその仲間入りをしています。これまでの罪滅ぼしにはならないかもしれませんが、せめてできることをしていきたいと思います。