グローバルSDGs講師育成講座受講生のレポートを紹介します。
Sustainable Development Report 2023について。
最後に、神宮外苑の再開発について、SDGsウォッシュになっていないかの提言もあります。
Sustainable Development Report 2023 内の *World SDG Dashboard at the midpoint of the 2030 Agenda 2.1の図を見ました。視覚的にわかりやすく出来ています。目標アイコンを緑、黄色、オレンジ、赤のどれかで識別しています。緑は達成できていること、黄色は課題があることなどを表しています。また、進捗状況をみる矢印もついています。この図を見ると、緑でぬられた目標はなく、ほとんどがオレンジ色か赤色でした。赤はmajor challenge、課題達成にむけて非常に重大な課題があることを意味しています。赤色がついていたのはGoal 2,3,11,14,15,16です。しかし、Goal 3の矢印は、斜め上を向いていますのでmoderating improving、 緩やかに改善方向であることがわかります。それ以外のGoal 2,11,14,15,16、は矢印が横向きですので、stagnating、 硬直・停滞していることがわかります。Goal 14は「海の豊かさを守ろう」Goal 15は「陸の豊かさを守ろう」で、環境面の目標ですが、同じ環境に関する目標であるGoal 13「気候危機に具体的な対策を」は少しだけよいオレンジ色(重大な課題がある)で矢印は横向きで停滞を表していました。気候については、国連事務総長が”global warming” ではなく”global boiling”であると強い言葉で表していましたので、同じ環境目標のGoal 14,15 と異なる色付けになぜかという疑問がわきました。
同じSustainable Development Report 2023 内の**2023 SDG dashboards by region and income group (levels and trends)2.16の図を見ると、ラテンアメリカ・カリブ地域とサハラ以南地域で黄色ながらも真上を向いた緑色の矢印がついていて、課題はありつつも順調に改善に向けて動いていると評価されているのがわかりました。また、オセアニア地域は緑色で横向き矢印がついているので、目標が達成されておりそれを維持している形であることがわかります。
また、2021年の報告で悪化方向で報告されていたGoal 12「つくる責任、使う責任」は黄色で斜め上向きの矢印になっています。中東・北アフリカとサハラ以南諸国で上向きの矢印、特に低所得および中低所得国で、緑のマークと上向き矢印がついていて、目標達成できていて今も順調に伸ばしていると読み取れます。
Goal 12,13 の評価のどちらにもサハラ以南諸国が関係しています。2019年のjicaの広報誌によれば、この地域は気候変動の影響を最も受ける地域であり、国家やコミュニティが積極的に対応策強化を行っています。2016年には、各国が協力して進めるプロジェクト(AI-CD)がアフリカ開発会議にて決まっています。これらの取り組みの成果の可能性があると思います。
国連広報センターが出している日本語版のSDGs 報告特別版も見ました。特に、Goal 2,3,11,14,15,16について見てみました。Goal 3「すべての人に健康と福祉を」では、改善がすすんだ点もあげられています。200カ国中146国の5歳児未満の死亡率の目標達成などです。Goal 2では、食料価格の高騰が影響していることも書かれています。コロナ以降の経済や社会の不安定さが関係しているようです。ロシアウクライナ戦争も影響しているだろうと推測します。そしてGoal 16 の報告にある民間人の死者数急増や故郷を追われた数は、ロシアウクライナ戦争も大きく関わっています。
Goal 14,15では、強い言葉が使われています。Goal 14では、「海洋の非常事態」15では、「人と自然の付き合い方 抜本的転換が必要不可欠」と最も目につくところに書かれています。Goal 13も強い言葉が使われています。「地球の転換点ー気候変動がもたらす惨禍は目前にー」となっています。環境面への対策が急務であることを訴えています。
環境面への対策は直接的にも間接的にも行わなければなりません。環境面の目標達成は、社会面、経済産業面の目標としっかり関連しているからです。環境面への直接的な行動を誰もが取れるわけではありませんが、間接的に他の目標を通して環境面の達成への貢献を行うことができます。特にGoal12 は、ターゲットに次のようなことがあげられています。
12.5 2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の
発生を大幅に削減する。
12.8 2030年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和し たライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする。
私たちの消費行動を考えていくことによって、Goal12とともにGoal 13,14,15 の達成に貢献できるのではないでしょうか。
最後に、Goal 12と環境に関して、私自身が意識し始めているからかもしれませんが、企業のSDGsの取り組みについてのアピールが最近目立つようになったと思います。これは、良いことだと思います。外苑前でサステイナブルな食材を使ったレストランがテレビで報道されていました。大企業のSDGsの取り組みとして始めたレストランです。非常にインパクトがあり、消費する側への訴えにもなると思いました。
と書いてこのレポートを終えるつもりでしたが、友人が開いている英語discussion に参加して、思うことがあり、もう少し書き加えることにしました。そのテーマは、外苑の再開発でした。外苑の再開発計画は聞いていました。住民から反発が出ていることもニュースで知っていましたが、問題点をあまり理解していませんでした。そのdiscussion で、APnews の9月17日版、Guardian の9月24日版、およびICOMOS(国際記念物遺跡会議)が9月5日に提出したHeritage Alert の要約に目を通しました。問題点はいくつかありますが、主な点では、再開発にあたっての十分な話し合いができていないこと、開発に当たっての環境アセスメントを開発側が行っており独立機関を利用していないこと、科学的なデータとされるものに誤りがあると指摘されていること、少なくとも100年以上の木々を大量に伐採することになりCO2の排出など環境負荷を伴うこと、などがあげられます。著名人や研究者、国際機関などから計画見直しの声があがっています。この計画が環境に影響するものであれば、SDGsを進めようとしている動きと反するのではないでしょうか。先にあげた外苑でのSDGs関連のレストランを始めた会社が、この開発企業の1つになっています。片方でSDGs推進を、もう片方でSDGsの考えと反することを行っていることになります。大きな組織において、矛盾は起きやすいと思いますが、SDGsがただの企業イメージのための看板にならないことを望みます。
jica 広報誌:https://www.jica.go.jp/Resource/publication/mundi/1908/201908_04.html
ICOMOS Heritage Alert
R.O
「SDGsがただの企業イメージのための看板に使われている」という「SDGsウォッシュ」の事例もあちこちで見られるようになりました。真の意味でのSDGsとは何なのかということ今一度確認し、監視していかなければならないと感じます。
神宮外苑再開発については、グローバルリサーチでも問題があると感じ、2022年初めからずっと取り上げ続けています。気になる方はこちらをご覧ください。