グローバルSDGs講師育成講座受講生のレポートを紹介します。
Lesson 11の課題:
日本企業のSDGsの取り組み例で、あなたが注目していたり、特に優れていると思うものを一つ選んでまとめなさい。
今回の課題のために、身近な企業の取り組みを調べていました。そうしていた中で、先日買い物時に、キットカットの大袋がプラスチックではなく紙ベースになっていることに気づきました。調べてみると、プラスチックゴミの課題解決のために、2019年9月より、切り替え始めていたことを知りました。
キットカットは、スイスに本社を置くグローバル企業ネスレ社が販売しています。企業全体で環境問題に取り組んでいるようですが、キットカットの大袋の紙化は、ネスレ日本が始めた取り組みです。ネスレ日本は、その他にも独自の環境に配慮した取り組みをすすめていて、ウェブページ上で発信しています。それを見ながら、次のように分けてみました。
プラスチックの代替製品への転換や廃止
自社製品の食品ロスへの取り組み
廃棄物の再生利用
再生可能エネルギーによる電力購入
環境コストの低い輸送手段への変更
沖縄でのコーヒー栽培プロジェクトー農業改良、雇用創出、教育
啓蒙活動
これらの活動は、SDGsの目標12の「つくる責任、つかう責任」に当然関連していますが、その他、食の問題(1)、エネルギー問題(7)、働きがい(8)、産業と技術革新(9)、街づくり(11)、気候対策(13)や海洋汚染対策(14)などに関連し、かつ、それぞれの活動は他の企業と協力や協賛の形で実施していますので、目標達成に向けてパートナーシップ(17)を推進しています。上にあげた取り組みの中で、協力企業との取り組みが面白いと思ったものをいくつか取り上げます。
・自社製品の食品ロスへの取り組み
納品期限の問題で、通常流通に乗せられずに廃棄される可能性のあるネスレ製品をみなとく株式会社(現 ZERO株式会社)の開発した「食品ロス削減ボックス fuubo」を使って販売しています。非対面、非接触、キャッシュレスの無人販売機で、みなとく株式会社が製品を買い取って販売する形式です。最初は全国5か所設置だったようですが、現在他の食品会社の製品販売も含め、設置箇所も全国に広がっています。大学構内や県庁、鉄道などにも設置されています。設置機関や購入者は、食品ロス対策への貢献にもなります。
また、ネスレは今年4月アースデイを前に、不用品のリサイクル販売のセカンドストリートとコラボして、3か月間の限定でしたが、通常流通に載せられないネスレ商品の販売を行っていました。価格は、通常の小売店での販売より安くなっていました。
どちらも、ネスレにもメリットがあり、消費者にもメリットがある面白い取り組みだと思います。
・廃棄物の再生利用
ネスカフェの紙製パッケージをトイレットペーパーの原材料の一部にリサイクルすることを、コープ神戸と開発しています。また、パッケージの回収ボックスを置き、日清紡と共同で、集めたパッケージを紙糸にし、直営店ででたコーヒーの残滓を染料にして、衣服をつくる取り組みをしています。付加価値がつくアップサイクルのモデルです。同じようにして、神戸市と共同で、集めた紙パッケージと六甲山の間伐材を利用して、子供服を作成し養護施設の生徒に贈ったり、相撲協会と協力して国技館で回収した紙パッケージからタオルハンカチを作成して墨田区の新生児保護者に贈呈しています。
「ネスカフェ ドルチェ グスコ」のプラスチック容器は、専用回収ボックスにて回収され、リサイクルペレットに再生される取り組みが実施されています。テラサイクル合同会社とともに、イトーヨーカ堂の協力を得て神奈川県で実施されている取り組みです。
ネスレは、歴史ある食品業界の大手の1つですが、持続可能な社会の実現にむけての取り組みにあたって、他企業や団体と協力しあって実施していることを今回知りました。SDGs の実現にむけての取り組みやESD指標の意識は、欠かせないものになってきていますから、他の大手企業も、このように他業種と結びつきながら取り組んでいるのだと思います。小さなネットワークがあちらこちらにできて、それが少しずつ大きなネットワークになっていくように感じます。これは、ネスレが一般社団法人アップサイクルに参画したりWWFの「プラスチックサーキュラーチャレンジ2025」に参画していることからも感じるところです。今回、いつの間にかキットカットの袋が変わっていることに気づいたように、今後気づいたら製品の扱い方の常識が変わっていたということが起きるのかもしれないとも思います。
最後に「ネスカフェ 沖縄コーヒープロジェクト」にも触れておきます。民間企業だけではなく、沖縄市、琉球大学、農業高校を含んだプロジェクトです。それぞれの知見と技術を利用して国産コーヒーの生産をめざしています。沖縄の産業の変革にもなり雇用創出も見込まれると思います。国産の流通がでてくれば、生産や輸送にかかるCO2や水のコストも減るのではないでしょうか。高校が含まれることで、体験や学習をとおして将来にしっかりつながっていくプロジェクトのようにも思います。
また、ネスレ日本は、SDGsへの取り組みを考える総合探求の教材を作成し中学や高校への提供も行っています。自社の事例を参考に自分たちの身の回りから取り組んでいくことを考えるように作成されているようです。よりよい社会の実現には、学生たちへのアプローチは欠かせないものだと思います。
ネスレ日本の取り組み:https://www.nestle.co.jp/csv/japan/activities
fuuboについて: https://spaceshipearth.jp/minatoku_fuubo/
R.O