グローバルSDGs講師育成講座受講生のレポートを紹介します。

Lesson14 外国のSDGsの取組の中で、参考にしたい事例について
 


 フィンランドは「世界一幸せな国」と言われ、福祉の国、SDGs先進国でもあります。それはなぜかというと、国だけでなく企業、個人がSDGsの意識が高く、SDGsの生活が日常的に取り込まれているからです。

 例えば、ごみ問題。フィンランドでは、SDGs教育で「自分たちのゴミがどう利用されていくのか」ということを知っています。「Waste to Energy(ゴミからエネルギーへ)」という言葉が定着しており、これらの多くはバイオガスを作るための材料として生まれ変わり、残りは堆肥として使われており、廃棄物を利用した燃料開発が盛んです。

 ペットボトル、空き瓶、缶は回収機に入れると返金されるシステムになっており、家庭ごみとして捨てられることはほぼありません。衣料の回収ボックスが設置され、その中で使えるものをリユースしたり、頻繁に使わないものはシェアするという考えが若者を中心に増えてきています。

 また、都市では車を使うより、徒歩や自転車、公共交通機関を使うライフスタイルをとっており、フィンランド全体でSDGsに取り組んでいます。

 これらはSDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、目標9「産業と技術革新の基盤を作ろう」、目標13「気候変動に具体的な対策を」などの目標達成に貢献している。国民一人一人の意識が高く、日常の生活にSDGsが取り入れられているのがとても素晴らしいと考える。

 また、ジェンダー格差や教育格差に関しても積極的に取り組んでいる。フィンランドでは、女性のフルタイム勤務が当たり前であり、「ネウボラ」で子育て支援も手厚い。「ネウボラ(neuvola)」は「アドバイス(neuvo)」の場という意味で、妊娠期から就学前までの子どもの健やかな成長・発達の支援、そして母親、父親、兄弟、家族全体の心身の健康サポートを目的としている。これらの取り組みはSDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」目標5「ジェンダー平等を実現しよう」に貢献し、日本でもすすめてほしいと思う取り組みである。

 フィンランドでは妊娠の予兆がある時点でまずネウボラへ健診に行く。妊娠期間中は8回以上、出産後は15回ほど子どもが小学校に入学するまで定期的に通い、保健師や助産師を中心に専門家からアドバイスをもらいます。その際に、子どもや家族の必要に応じて健診が追加されます。健診は1回30分から1時間かけて面談し、母子の医療的なチェックだけでなく、個別に出産や育児、家庭に関する様々なことを相談でき、丁寧に対応をしてもらえます。また、担当制になっているため、妊娠期から子どもが小学校にあがるまで、同じ担当者(通称「ネウボラおばさん」)で、信頼関係が気付きやすい。それが、問題の早期発見、予防、早期支援につながっています。医療機関の窓口の役割もあり、出産入院のための病院指定、医療機関や専門家の紹介もしてくれます。そのため、フィンランドの妊産婦と乳幼児 の死亡率は非常に低くなっています。

 出産の際に、KELA(フィンランド社会保険庁)から母親手当として、「1子170ユーロの現金支給」または「育児パッケージ」の二つの選択肢があります。ほとんどの家庭、特に第1子を迎える家庭では母親手当として「育児パッケージ」を選択します。母親手当の支給には、ネウボラもしくは医療機関での妊婦健診の受診が必要です。このシステムは妊婦健診の導入口として効果的であり、現在ではほぼ全員が妊婦健診を受け、リスクの早期発見・早期予防に貢献しています。

 現在、育児パッケージの中身はベビーケアアイテムやベビー服、親が使用するアイテムなど43点(2022年版)。育児パッケージの箱は赤ちゃんの最初のベッドとしても使え、箱のサイズにあわせたマットレスや羽毛布団、ベットリネンが用意されています。パッケージの中身は男女共通で、価格や用途、さらに両親からの要望を考慮しながら少しずつ改良され、よりサステナブルなものになっています。

 他にも、フィンランドにはいろいろな子育て家族向けの手当や休業制度があります。

2022年8月1日、親が2人いる場合は320日(勤務日)を均等に分けることができるようになりました。これは親の責任も喜びも平等に分かち合い、職場や賃金の上でのジェンダー平等促進を目的としています。さらに、育休日を増やすことで、より利用しやすくしています。もともと父親休業の取得率は約8割でしたが、新制度になり更なる取得率向上を目指しています。

 また、フィンランドでは、男性が子育てをするのは当然とされています。小学生は、父親の方が母親よりも子どもと過ごす時間が長いという統計結果もあり、「手伝う」のではなく父親として子育てをしています。もし、離婚・別居となっても、親権を両方で持つことが多く、元パートナーと可能な限り協力し子育てをすることを推奨されています。

 保育園においても、母親の就労に関係なく入ることができます。自治体は保育場所を24時間確保する責任があり、夜間保育や特別支援が必要な子どもを含む全ての子どもに対して安くて良質なサービスを提供することが義務付けられました。

 利用者の90%以上は自治体の公的保育を利用しています。利用料は所得に応じて決まり、例外を除き通常4カ月前までに申し込む必要があります。

 全日保育の利用は最長10時間までです。利用料金には昼食代も含まれ、希望する場合は朝食も提供されます。保育所では、3歳未満の子ども4人につき、1人の保育専門職が担当し、1クラスの人数は12人まで。3歳以上の場合は、子ども7人につき大人の保育専門職が1人以上、1クラス最大21人です。

 6歳前後の子どもたちは一年間、午前中を就学前学校で過ごします。就学前教育は自治体の管轄で授業料は無料。クラスは幼児教育教師、または基礎学校教師が担当し、特に教科はありませんが、子どもたちの学びと発達を促し、学校にあがる基礎を作ることを目的としています。遊びを通じて各自の発達に応じた形で自己肯定意識と、学び方を強化します。

 フィンランドの出産、子育ての取り組みは、行政、学校、個々の家族である全体で行われており、ジェンダー平等に貢献し、女性の社会進出にも大変役立っている。

 日本では、母子検診等の制度はあるが、ここまで一貫して自治体が子育て支援をすることはない。こうした制度を日本でも取り入れれば、子育てがしやすく、女性が自立し働きやすい社会になる。そうすれば、少子化対策になり、日本の高齢化社会にも歯止めがかかるかもしれない。フィンランドの税金の高さなどを考えると、現実的には予算の問題等いろいろあるが、子育てが楽になれば虐待などもなくなり、多方面でいいことしかないと思われる。

日本のすべての自治体でネウボラを実践してほしいと思いました。

SM