グローバルSDGs講師育成講座受講生のレポートを紹介します。

Lesson16 外国のSDGsの取組の中で、参考にしたい事例について
 


ちょうど今2023年4月は、日本各地で地方選挙が行われている。
私の住んでいる県でも、県知事選挙と県議会議員選挙が行われる。
争点はいろいろあるが、この県には原子力発電所があり、多くの有権者がその存続に大変興味や危機感を持っている。
一方で多くの政治家や候補者は、あえて原発問題から争点をずらしたり、公約にしなかったり、はっきりと自分の立場を明らかにしていない。
原発問題についてはっきり立場を示し、私が賛同できる候補者に投票したい。

そんな中、ドイツが脱原発を完了したとのニュースが入ってきた。
脱原発はSDGsの目標7 ~エネルギーをみんなに、そしてクリーンに~ をはじめとして、ほぼすべての17の目標に関連する。
今回のレポートは、このドイツの取組を調べ、考察してみる。

まず現状を確認すると、4月15日に現在稼働中の最後の原子炉が、運転を停止し、ドイツ国内の原子力発電はゼロになる。
ドイツが脱原発を決めたのは、紛れもない2011年の日本の東北大震災における、福島原発事故を受けての決定だったようだ。
事故後に脱原発が実現するのは先進7カ国で初めてで、今後は再生可能エネルギーをさらに拡大し、後戻りはしない決意である。
(事故前にイタリアが脱原発実現)

現実問題として、課題は山積みのようだ。
例えば、廃棄物の処分場の選定、数十年かかる廃炉作業、ロシアのウクライナ侵攻などによるエネルギー供給不安や価格高騰、そして国内の世論や経済状況の悪化のおそれなど、原発完了後はいばらの道らしい。
このような課題は日本と共通すると思われる。

しかし今私が注目しているのは、そのような今後の問題ではなく、ドイツが脱原発を決意し、実際に実現させたことだ。
その背景を少々確認してみる。

ドイツは1961年に原発送電を開始し、(日本は1963年)①70年代には反原発運動が活発化し、②80年代には旧ソ連のチェルノブイリ原発事故でドイツの土場も汚染され、一層原発不信が高まった。
③2000年代には脱原発主義の環境保護政党(緑の党)が連立政権を組み、2022年ごろまでに全原発の運転を停止する脱原発法を成立させた。
2010年にメルケル首相がその法律の先送りを決めたが、④2011年の福島事故で再び脱原発を決めた。
「日本のようなハイテク国でも事故が起きたという事実が、原発はやはり危ないという意識をより高めた」とドイツの脱原発担当者が述べている。

以上①から④の流れを経て、脱原発に至ったが、①から③までのところで、多くのドイツ人が、元々原子力エネルギーに批判的だったらしい。
もともとドイツ人は(一般論として)、20世紀から環境問題に心を砕き、環境経済学や環境政治学などが他の欧米諸国より盛んだったという土壌がある。
当時は水質汚濁や大気汚染などが大問題であり、ドイツ人にとって自分たちの森(ドイツ人にとって国や故郷は森というイメージがあるらしい)が汚されるのは、自分たちの精神が汚される感覚があるようだ。
そして几帳面で真面目で質実剛健な国民性から、30年以上前からリサイクルに大変熱心だった。(参考文献/ドイツ人のまっかなホント/マクミランランゲージハウス出版)
このあたりは日本社会や日本人と違う点であろう。

最終的に④を決定したとき、当時のメルケル首相下で(彼女は当初脱原発主義ではなかった)原子炉安全委員会は、「安全上の理由から、すべての原発を直ちに廃止するべき」という結論には至らなかった。
この点は日本と共通している。
しかし、同時にメルケル首相は、別の委員会 ~エネルギー供給に関する倫理委員会!~ を招集し、そこで全く逆の結論に達した。
委員会のメンバーは社会学者や哲学者、宗教関係者などで、「福島原発事故の結果、原子力リスクの分析を技術者だけに任せることは間違いであることがわかった。原発事故の影響は無限であり、リスクを正しく予想することが極めて困難。したがって、原発をできるだけ早く廃止して、よりリスクの少ないエネルギー源に代替するべきだ」と政府に勧告した。
ここからドイツの脱原発は本格的に進み、本日に至る。

日本ではこのような倫理委員会はないと思うが、日本の各種専門家会議は政府のお抱え状態と化しており、存在価値が疑問視されている。
また、専門家会議だけでなく、第三者委員会に諮るということも日本ではあまりないように思え、ぜひ日本もこのようになれば・・・と願う。
政治が、政治家が、日本と根本的に違う。
また、2011年から脱原発に向けて、計画が頓挫、変更されることもなかったのは、他国にもあまり類を見ないように思う。
このドイツの決断と一貫性と前進に大変注目しており、日本もそうあって欲しく、ぜひ今後の取組を成功させ続けて欲しい。

一方、2022~2023年の日本の世論調査では、原発再稼働賛成が約40~50%、反対が35~45%である。
5年前の2018年には賛成30%、反対60%だった。
原油価格の高騰、光熱費の値上げ、福島やチェルノブイリの記憶が遠のくなどの理由が挙げられる。
(日本人の民族的特徴の1つに「忘れやすいこと」が挙げられている)

他国の動きとしては、スイスが2034年脱原発に向けて進行中である。
ベルギーが2025年脱原発予定だったが、ウクライナ侵攻のため10年予定を先延ばした。
韓国は2017年に脱原発を宣言したが、政権が変わって現在原発推進であり、日本も他の多くの外国も同様、原発推進中である。

最後に私個人の話を二点書き記しておく。
以前にも書いたのだが、約20年前、趣味のスキューバダイビングを、たまたま地元の原子力発電所近くの海で行った。
そこの水温は、近くの他のダイビングスポットよりも高かった。
そしてそこで見た魚が、他で見られる同じ種類の魚より大きくまた色も違い、そして変な形をしていたり、変なイボイボのようなものがついていたりして、恐ろしく、気分が悪くなった。
ガイドさんや一緒に潜った人たちと話をすると、その発電所近くの海では、変形魚はよく見られるとのこと。
科学的根拠はないかもしれないが、私にはそこが安全な場所だと思えなかった。

もう一点は、やはり約20年前、私と同僚のアメリカ人2名が、その原子力発電所へ英語の企業レッスンのため週一回約2時間派遣されることになった。
しかし2名のアメリカ人教師達は、原発に行って働くことを怖がって強硬に嫌がった。
(アメリカ人も原発は好きではないようだが、今後原発をさらに増設するらしい)
そんなに行くのが嫌なら、企業レッスンは断わろうという話になったが、原発の方々が、「原発は安全だからぜひ発電所内の見学をしてください」とおっしゃって案内をしてくださった。(原発の社員職員の皆様はとても良い方々です)

ヘルメットなどいろいろな装備をして、とても暗い、そして広い、時々静寂と時々ものすごい振動や轟音のする世界最先端の発電所内を緊張しながら約1時間見学させて頂いた。
とても貴重でありがたい機会であった。
が、大変申し訳ないことに、人間がいるべき場所ではないように感じた。

「原子力発電所がなくなると、仕事がなくなるから社員や地元のために存続させよう」という主張はわかるが、「果たして本当にそこで働いている人は、一生そのような環境の職場で働きたいのかな? 心や体は大丈夫かな?」 と、大きなお世話ながら思った。
もちろん大丈夫な方が多いのかもしれないが、新型コロナウィルスのクラスターが、その発電所からはしょっちゅう発生していたように記憶している。

とりとめのない感じで終了させて頂くが、原発はやはり、誰の健康のためにも、環境にも良くないと実感している。

まもなく日本はGDPで、世界3位から4位に落ちると言われており、日本を抜くと予想されているのは脱原発をするドイツである。
そのドイツを今後も注視(応援)しつつ、今自分にできることをしていきたい。

まずは選挙から。

MK