グローバルSDGs講師育成講座受講生のレポートを紹介します。

Lesson3の課題:SDGsの17のゴールのうち関心を持つ目標について、メディアや人との会話で気が付いたことをまとめましょう。

 

少し外に出ただけで汗だくになって、「今日の暑さはヤバイですね」と毎日のように、会う人たちとの挨拶になっているほど、地球が沸騰化の時代に入ったことがを身に染みるこの夏。それでも、日々会う人やSNSの書き込み、学習会などを開催しても、市民の気候危機や再生可能エネルギーへの感心が低いことにモヤモヤしていたところ、こんな記事を見つけた。

—-
「死ぬほど暑い」12万年ぶりの猛暑 なぜメディアは表層的な現象しか報じないのか
井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)8/20(日) 12:10

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/7eef7f4ebb7ec833a52555698134382ab8ba926a

この8月は、熱中症アラートか台風予報のどちらかが報道される繰り返しなほど異常さを感じる気候。でも報道の中では台風に気をつけよ、暑いから気をつけよと言うだけで、その原因や解決策が示されない。「対処療法だけでなく、根本解決を…!歯痒い!」と思っていた、私の気持ちをまさに代弁してくれていた。

この記事によると、「2023年8月1日から20日までに「酷暑」を報じたメディアを検索すると、502件がヒットする。だが、そのキーワードに「気候変動」を掛け合わせると、15件と少なくなる。さらにこの15件を精査すると、そのうち4件しか関連づけて報道していない。つまり、「酷暑」を報じたうちの0.7%に過ぎない。」
また「猛暑」✖️「気候変動」のキーワード両方を含んで報じているのもたった4%だそうだ。なんという少なさ。

この結果を大いに危惧する。何故ならば、こういう日本人の特性があるからだ。
「先進国の中で日本はマスコミへの信頼度の高さは特異」
https://president.jp/articles/-/43134

日本全体の関心がなかなか高まらない要因はここにあり…、と妙に納得してしまうのである。
この気候変動(気候危機)への関心問題は、まさにSDG13. 気候変動に具体的な対策を:CLIMATE ACTIONである。
気候変動は、約200年前の産業革命以降の人間の経済活動による温室効果ガスの影響が明らかであり、経済的な豊かさや利便性の恩恵を存分に受けている先進国TOP10の国だけで温室効果ガスの7割以上を出している。(https://foejapan.org/issue/20190926/4194/)
そんな先進国の1つ、私たち日本人の1人あたりのCO2排出量は、なんと世界で4番目に多い。

出典)温室効果ガスインベントリオフィス/全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(https://www.jccca.org/)より

日本人と同じ暮らし方を世界中の人がしたら、地球は3個必要だと言われるほどの、私たちの暮らしぶり。それだけ温室効果ガスを出しながら暮らしている日本人が、今、何を考え、何を選び、どう暮らすのか?日々選んだその選択こそが、地球規模の課題である気候危機に大いに影響していると言える。

気候危機は、人間が起こしたものだ。だから、解決できるのも人間だ。
世の中の経済も社会も私たち1人ひとりの暮らしの積み重ねなのだから、1人ひとりがなにか一つ行動を変えることから、全てが始まり、その集合体が解決策となる。
是非とも日本人の私たちから、解決する行動を起こしていきたい。そう思って仕方がない。

では、具体的にどんな行動を起こすのか?考えたい。
筆頭の記事で井出さんが紹介している書籍『ドローダウン』の通り、気候危機の対策となりうる行動は、探せば自分たちにもできることがたくさんある。

その中で、一番簡単であり効果が高いと言えるのが、自宅の契約している電力会社を再生可能エネルギーの電力会社に変えることだ。
SDG7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに:AFFORDABLE AND CLEAN ENERGY、まさにこの目標のことである。
家庭から出るCO2排出量の約半分は電力に起因しており、それを再エネに変えることで排出量を減らすことができるのだ。前著『ドローダウン』の効果がある影響力ランキングでも2位風力発電、8位ソーラーファーム、10位屋上ソーラーと上位に再エネがランクインしている通り、発電の仕方から脱炭素化することは大いに気候危機への解決策として貢献できる。

この電力会社のスイッチング(切り替え)は、携帯電話の契約変更よりもずっと簡単で、オンラインなどで申し込める再エネ会社ならば、必要事項の入力だけで気軽に変更ができる。私自身が実際に再エネの電力会社に変更した時にも5分もかからなかった。この時が私にとっても人生初となる電力会社の変更だったので、変える前は色々と身構えてしまっていたのだが、やってみたら簡単すぎて拍子抜けしてしまうほどだった。たったそれだけの手続きで、この暑くて苦しい夏の原因である地球沸騰化への対策となるのだから、やらない手はない。
それに、ここまで暑くなると毎日、冷房をつけずには暮らせない。だからこそ冷房を使えば使うほど、地球沸騰化を押し進めてしまう火力発電ではなく、電気を使って涼しく過ごしてもCO2を出さない(もしくは+-0となる)再生可能エネルギー発電を選ぶことは、未来世代への負担を減らしながら日々を気持ちよく暮らせる魅力が詰まった選択肢だ。

そうやってエネルギーも消費者として使う責任を考えて選びたい。だから、エネルギー分野においてもSDG11.作る責任、使う責任:RESPONSIBLE CONSUMPTION AND PRODUCTIONの目標を意識して、生産者と消費者が共に意思をもって、再エネを作り、使うという行動を起こしていきたい。
(※因みに現状、再生可能エネルギーならばなんでも良いかと言うと残念ながら、そうではないのも現実にある。環境や自然、そこに住む人たちにマイナスとなる負担を押し付けてしまってるタイプの再エネを選ばないよう気をつけて欲しい。(例えば訴訟が起こっているようなケース。) そうではなく、地域の環境に溶け込み自然への負荷を最小限にして、そこに住む人々にとって経済面や地域おこしのような地域力アップにつながっている応援したくなるタイプの再エネというものも多く存在する。ぜひ後者の再エネを選びたい。(パワーシフトの指標は後者のような再エネ会社を選びたい時の参考になる。https://power-shift.org/7points/)これこそ、生産から廃棄までを考えたSDG11の再エネである。)

このようにSDGsへ貢献するような電力を私たちは選ぶことができる。しかし、実のところ、日本人で電力会社を変更したのは、いまだ3割弱程度しかいない(2022年6月調査結果https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001199.000007815.html#)

そもそも日本で家庭ごとに電力が選べるようになったのは、2016年の4月。まだ10年も経っていない。だから、「電力自由化」になったと言っても、消費者は何をどう選んだら良いのか、「電力を選ぶ」という行動そのものから不安に思う人が多いようだ。
ここには、SDG4.質の高い教育をみんなに:GOOD EDUCATION、そして、SDG13. 気候変動に具体的な対策を:CLIMATE ACTIONのターゲット「13.3気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する。 」のように、エネルギーを選ぶということはどういうことなのか、子どもから大人まで学び(教育)が必要である。

実際に「なぜ電気を切り替えないのか?」と話すことがよくあるのだが、「電力会社を切り替えると停電にならないか不安」「新電力の会社が倒産したらどうなる?」などの疑問が多い。
これらはそもそも今の日本は、エネルギーの「発電・小売」と、発電所から各家庭までの「送電」が分離されているという基礎から知られていないため、不安が生まれている。家に届く電気(送電)は、どこの電力会社を選んでも変わらないため、停電リスクや送電リスクも含めて暮らしは何も変わらない。この「電力会社を選ぶ」という行為そのものは、実は、消費者から見れば、ただただ電気代料金の支払い先(発電・小売事業者)を選ぶだけだと言える。つまり、お買い物は投票!どんな電気を作っている電力会社を未来に残したいか?という視点で選ぶことができる。

また、もう一つ、電気を切り替えられない理由の多くを占める特徴的な回答がある。それは「電気のことは夫の範疇なので、妻の私には変えられない」もしくは「旦那に切り替えたいと相談できない、余計な話で喧嘩をしたくない」だ。離婚率が高まる日本の中で、夫婦での話し合いが難しい家庭が多いことが露呈しており、もしかしたら、ジェンダーギャップ指数が先進国で最下位116位の日本らしい特徴ではないかとも危惧する。女性が家庭内でエネルギーを選ぶ権利が無い、もしくは、共に決めるパートナーシップが無いのは何故なのか。実に、再エネを推進する活動において、この問題が大きな障壁になっている。

私たちが毎日、どんな家に住み、どんなものを食べて、どんな服を着て、どんなエネルギーを使って暮らすのか。全てが、気候危機へ影響を及ぼしている反面、全てに対策となる選択肢がある。(近年、だいぶ増えてきた、との言い方が妥当かもしれない。)

日本人にとって信頼度の高いメディアでの情報発信が少ない中、1人ひとりが関心感心を持てるように、発信を広げていくことの大切さを痛感するばかり。それでも、どんなことも動き出すのは全てはまず「私」から、だ。そして、コツコツと伝え続けることを諦めずに。
一番大事なSDG17. パートナーシップで目標を達成しよう:PARTNERSHIPS FOR THE GOALSの目標の通り、市民、事業主、行政、メディアなどいろんな人と手をつないで進めていくことで、関心を高めて行動する人を増やす活動をこれからもしていきたいと改めて思う。

p.s.ちょうどこのレポートを書いた日、祖母の一周忌で家族が実家に集まっていた。その日に、とうとう実家の電力会社を再エネに切り替えてイイ!と、私の父親が承諾してくれた。とても嬉しかった。実はもう何年も前から、ちょくちょく再エネにしてほしいなぁと伝えていたのだ。最初は懐疑的で否定的だった話し合いから始まり、たまに顔を合わせた時に、電気代など関連する話題になる度に、再エネを選んでとジャブを打ち続けてきてのその日。初めて、「変えてもイイ」との回答が!父親と同居している妹が喜んで、早く孫達のために変えよう♪と手続きしてくれることになりました。

福本良子



この夏、日本からは「暑い暑い」という言葉がよく伝わってきましたが、その要因として人間の行為による気候変動と関連付ける報道などがあまりないように感じていました。こうやってデータでみると、やはりそうなのかと納得しました。

「暑い時はエアコンつけましょう」というのはもちろんなのですが、そのためには電気が必要です。せめて家庭で使用する電力を再エネ会社に切り替えるというのも誰もができること。そして、それが思ったより簡単でオンラインで5分もかからないということなら、検討してみてはいかがでしょうか?