グローバルSDGs講師育成講座受講生のレポートを紹介します。

Lesson 3の課題:

「SDGs17の目標のうち、自分が関心を持つ目標を選び、それに関連する情報について、日々目にするメディアや一般社会、職場、他の人との会話などから得たことをまとめてみましょう。」


 2023年のノーベル賞は、11名中4名の女性が受賞した。生理学・医学賞に、コロナウイルスワクチン開発に道を開いた、アメリカのカタリン・カリコ氏(68歳)。経済学賞にアメリカのクラウディア・ゴールデン氏(77歳)。平和賞にイランの女性人権活動家ナルゲス・モハンディ氏(51歳)。原子物理学の教授であるスウェーデンのアンヌ・リュイリエ氏(65歳)。今回は、メディアで、いつも以上に女性受賞者がスポットライトを浴びて報道されている。

 まず、ノーベル経済学賞に選ばれた米ハーバード大学のゴールデン教授は、男女間の賃金格差が生じる要因を解き明かし、女性の出産後に男女の賃金格差が広がったとの結論を導きだしたことが評価された。オーケストラ入団試験にブラインド・オーデイションを使った、無意識の偏見の研究は興味深い。日本に関しては、昇進機会のある正社員ではなくパートの女性が多いと解説している。

日本において、私はいわゆる「130万円の壁」の考え方が配偶者の扶養内に収まる働き方として、女性の自立を阻んでいるのではないかと考えることがある。130万円の壁とは、配偶者に扶養される人がパートなどで働き、年収が130万円以上となると、扶養から外れて国民年金と国民健康保険の保険料を払う必要が出て、結果として手取りが減ってしまう状況を指す。私は現在個人事業主で、20年ほど前に夫の扶養を外れた時に、仕事への意欲が大幅に向上したのを記憶している。年金と保険料を払っても、130万円以上の収入を十分に得たいと当時強く願った。

 ノーベル生理学・医学賞を受賞したカリコ氏は、若い世代に向けてのメッセージで、「私は女性として、母として、同僚の女性科学者たちに対し、『家庭を持つことと科学者でいることのどちらかを選ぶ必要はない』と伝えています。子どもはあなたを見て見習います。あなたが子どもの模範になることが重要なのです。」と激励したことに勇気をもらった女性科学者は多いと思う。彼女の娘はボート競技の五輪金メダリストであり、「ボートも研究も、決してあきらめずに挑戦し続けることが大事だ。」とカリコ氏は語っている。さらに、後に続く後輩へのアドバイスを求められて、「スポットライトを浴びたければ女優になればいい。指示に従いたければ軍隊がいい。でも問題を解決するのが好きなら、科学はあなたのためにあります。」と述べている。何事でも自分が目指した目標に向かって「やめずにやり続ける」というのが一番エネルギーのいるものだと思う。

ノーベル賞の中でも最も評価の高いとされる平和賞が獄中にあるモハンマディ氏に授与された。受賞理由は、「イランにおける女性の人権擁護活動の巨大な功績」が評価された。平和賞では19人目の女性受賞者。女性の権利拡大を求めて、地道に活動してきた活動家を勇気づけるものだとされる。彼女は13回の拘束、31年の禁固刑や154回のむち打ちを宣告されたとされる。自分を犠牲にし、計り知れない苦難の中、闘う彼女の強さはどこから来るのかと思う。

 ノーベル物理学を受賞したアンヌ・リュイリエ氏について、日本のメディアは他の3氏に比べて大きく報道していないが、リュイリエ氏とカリコ氏は、世界最大の化粧品会社ロレアルグループのユネスコ女性科学賞を、それぞれ2011年、2022年に受賞している。ロレアル財団とは、フランスに拠点を置き、グローバルで活躍する女性科学者を支援するために、賞を贈っているグループ。化粧品会社が、このような賞を女性科学者に贈呈し、若手科学者を支援していることは、今回のレポートを書くにあたって初めて知りえた内容だった。このような賞は、女性科学者に大きな希望を与えると思う。 

 

ロレアル-ユネスコ女性科学賞について

①パリ本社主催 ロレアル-ユネスコ女性科学賞
科学の発展に寄与した女性科学者の業績を称え、5名に賞金を贈呈


②パリ本社主催 ロレアル-ユネスコ女性科学賞 国際新人賞
各国で推進している国内賞から、生命科学、物理、化学、工学、フォーマル・サイエンス(数学、コンピューターサイエンス)の分野で世界的に評価されるトップ15名の将来有望な若手女性科学者に賞金を贈呈


③各国主催 各国独自の国内版として女性科学者を支援
ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞
国内の教育・研究機関において研究を継続できるよう、生命科学、物質科学の分野から将来を担う若手女性研究者を支援する奨学金を贈呈


各国主催 理系女子を対象にした次世代啓発活動

参考リンク:https://www.loreal.com/ja-jp/japan/articles/commitments/fwis/

 

「ロレアル-ユネスコ女性科学賞」の国内版として、2005年に「ロレアルーユネスコ女性科学者 日本奨励賞」が創設されている。ロレアル財団は、次のように述べている。「世界は科学を必要とし、科学は女性を必要としている」という本活動の理念のもと、科学分野で活躍する女性たちの更なる飛躍と地位向上を目指し、様々な取り組みを推進します。

世界における女性研究者は33%、女性ノーベル賞受賞者は全体の4%以下、日本における研究者の割合は17%以下という現状が、今後、このような財団の社会貢献や社会変化の中で、より改善されていくだろう。科学を目指す子ども達が、性別によって無意識に選別されることなく、自分のやりたいことを追求できる社会であってほしい。

H.S