毎日、ウクライナ紛争のニュースが入ってきて、はらはらしています。爆撃などによる被害の様子を見て早く戦争が終わってほしいと願いつつ、自分ができることは何もないという無力感もあります。そんな中、「ESG」とか「SDGs」などの一見関係のないようなキーワードが出てきて、遠い外国に住む私たち一般人でもできることがあるかもと思い直しました。

 

 

ロシアのウクライナ侵攻

イギリスではここ数週間毎日、ロシアによるウクライナ侵攻のニュースばかり。ニュースから流れてくるウクライナ国民の被害の様子、国を逃れて避難する人々、世界各国の強い抗議の声を無視して攻撃の手を緩めようとしないロシアのプーチン大統領。ゼレンスキー大統領のもと、結束して国を死守しようとするウクライナの人々。

背景には様々な状況があるにせよ、独立国家に武力で侵攻し、罪のない一般民にまで害を及ぼすという暴挙は戦争犯罪にあたる国際法違反で、到底許されるものではありません。

では、どうしたらロシアの横暴をやめさせることができるのでしょうか。

 

ロシアの侵攻をとめるために

ロシアのウクライナ侵攻を止めるために、これまで欧米など各国首脳がプーチン大統領との対話を試みましたが、あまり効果はないようです。国連でもロシアのウクライナ侵攻を非難し軍の即時撤退を求める決議に141か国の賛成がしましたが、ロシアは動じません。

ロシア政府はBBCなどの外国メディアを追放し、国内向けにはロシアの大手メディアを通じてウクライナ侵攻を正当化するプロパガンダを流し続けます。このため、多くのロシア人は真実を知らないままにプーチン政権が行うウクライナへの侵攻を支持しています。戦争反対のデモをしたり意思表示をする人はいますが、逮捕されたり口封じされたりするため、内心では反対でもそれを口にしない人も多そうです。

ウクライナ政府は首都にとどまるゼレンスキー大統領のもと「断固たたかう」とし、欧米などの諸国にも協力を求めています。とはいえ、これ以上戦争を長引かせないためには、武器や軍隊での応援というよりは、ロシアに侵攻をやめさせる、少なくとも話し合いに応じるために停戦させ、何とか和解を取り付ける方向に持って行きたいものです。

そのためにはロシアの国内世論に訴えたり、経済制裁によって圧力をかけることが重要となってきます。

 

ロシアへの経済制裁

2月24日にロシアのウクライナ侵攻が始まってから、欧米諸国を中心にロシアへの経済制裁が始まりました。当初はロシア大手金融機関に対して取引制限を行ったり、欧米でのロシア資産凍結などにとどまっていました。ロシアとの貿易・経済関係がある国が多い中、返り血をあびてしまう制裁を躊躇していたこともあります。

けれどもロシアが侵攻をやめないので、制裁の規模はだんだんとエスカレートし、少し前までには考えられないほどになっていきました。ロシアはSWIFT国際取引から締め出され、ロシア中央銀行の資産凍結も実施されました。ロシアでは大手クレジットカードやスマホ決済も使えなくなり、通貨ルーブルは大暴落です。

さらに、米国はロシアからの原油やガス輸入を全面禁止し、英国もロシアからの原油輸入の禁止にふみきりました。ドイツはロシアからの天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」の承認を凍結しているなど、資源輸出に頼るロシア経済は打撃を受けています。

経済制裁については各国政府や金融機関だけでなく、民間の国際企業が軒並み足をそろえ始めました。

国際企業がロシアでの営業停止を決定したのは、決済代金の支払いができないなどのビジネス上の理由もありますが、ロシアのウクライナ侵攻に対する「制裁」の意思表示という理由がおもです。

ロシア内での取引やサービスをやめたり、店舗を閉鎖するなどの企業が次々に現れて、撤退の発表と共に「ロシアのウクライナ侵攻に反対する」という意思表示を明確にしています。

 

ロシアから撤退した国際企業

「脱ロシア」化をはかった企業は、Apple, Spotify, Netflix, TikTok, Disney, IKEA, Lego, H&M, ZARA, Canada Goose, ルイヴィトンやフェンディなどラグジュアリーファッション大手のLVMH、グッチやサンローランを傘下に持つケリング、エルメスやシャネル、バーバリー、プラダなど、あげるときりがありません。

 

 

 

大手国際ブランドでも、コカ・コーラ、マクドナルド、スターバックス、ユニクロなどは、ぎりぎりまで撤退を躊躇していました。けれども、そういう企業に対して欧米諸国ではボイコット運動が起きました。

イギリスのTwitterなどではハッシュタグ「ボイコット」にこのような企業名をつけ (#BoycottCocaCola #BoycottMcDonalds #BoycottUniqlo)、ウクライナの惨状や被害者の写真と並べて挙げられたものがトレンドに上がっていました。

ボイコットや不買運動をおそれてか、3月8日にコカ・コーラ、マクドナルド、スタバがロシアでのビジネスを停止すると発表しました。

同じ日にユニクロが「衣料品は生活必需品なので営業を続ける」と発表したことが国際記事になっていて、今度は欧米諸国でユニクロボイコット運動に火が付き、ユニクロも少し遅れて店舗を閉めると発表しました。

 

経済制裁は効果があるのか

これまでの国際紛争で経済制裁の効果は限定的だと言われてきました。長期的には何らかの効果があるかもしれないが、すぐには結果が出ないという見方です。

とはいえ、昔と違い今の世界はグローバル化が進み、各国が国際的に貿易面で大きく相互依存しています。ロシア経済も輸出入に多くを頼っているし、冷戦後のロシア社会はすっかり欧米化しています。アップルやマイクロソフトがなくなり、ショッピングセンターのブランド店がほとんど閉店という状況にロシア人は不便というだけでなく、動揺をかくせないでしょう。

急に地下鉄の支払いがApplePayでできなくなり、いつも行っているマックが閉まり、Nikeのスニーカーが買えなくなると一般ロシア人も自分たちが国際社会から孤立してしまったのはなぜなのかと考えざるを得ないし、その中で勇気のある人は「戦争反対」の意思表示をするでしょう。

国際化したロシア社会で一般民に国際世論を知らせ、ロシア国内の反戦/厭戦気運を高めるだけではありません。ロシア国内で大きな力を持つ「オリガルヒ」と呼ばれる富裕層の中にも、プーチン大統領のウクライナ侵攻に対して異論を唱えるものも出てきています。彼らが欧米諸国に有している外国資産(預金、不動産や豪華ヨット)が凍結され始めているからです。

こうして、ロシア国内で一般民、ビジネス、富裕層が不満の声を上げ始めるとプーチンも強硬的な姿勢を取り続けることは難しくなります。このような機運が和解への政治的な交渉をするための大きな武器になるのです。

 

経済制裁が究極のESG

Politicoでのインタビュー記事で米国在住のロシア専門家、フィオナ・ヒルは述べました。

 

今、企業はESGに熱心ですが、ウクライナ侵攻を止めるためにロシアに対して経済制裁を行うこそが究極のESGです。

人々がアパルトヘイト中に南アフリカに投資したくないと思ったのと同じこと。

残忍な侵略と征服をやめないロシアに投資したいと思う人がいるでしょうか?

 

「ESG」とは企業が短期的な利益追求だけでなく下記の3つの指標を重要視するためのものです。

 

  • Environment(環境)
  • Social(社会)
  • Governance(ガバナンス:企業統治)

 

利益を追求するだけでなく、社会や環境に貢献する事業活動をする企業が高評価を受け、投資の対象になるという傾向は、消費者や社会の認識が広まるにつれて、ますます強くなりつつあります。

欧米諸国ではビジネスにおいてもはや無視できない潮流であり、日本でもビジネス界隈では注目されるようになってきました。

詳しくはこちらの記事を参考にしてください。

 

ESG投資の今後:日本でも重要性を増すコロナ後の社会

 

ロシアのウクライナ侵攻について抗議し、その意思表示のためにロシア内のビジネスから撤退するということは、ただ単に「戦争反対」という理由だけではなく、各社のブランドイメージを維持し、消費者や投資者にアピールするという「商業的」な理由もあります。

BLM運動などでも顕著でしたが、このようなイメージに敏感なNikeやAppleなどは即刻ロシア撤退をしました。

Appleは3月1日にロシアでの販売を中止して「私たちの心は暴力に苦しんでいる人とともにあります。難民を支援するためにできる限りのことを行っていきます。」とメッセージを発しています。

日本企業も欧米に追随してロシアから撤退するところが増えてきましたが、その理由としてはおもに供給や決済の問題をあげ、ロシアによる侵攻への抗議というメッセージをあげていないところが多いようです。まあ、それが実際の理由なのでしょうが。

けれどもどうせロシア撤退するのなら、ESG投資やブランディングの観点からは、しっかりとしたメッセージを発信した方がいいのではないかと思います。

 

SDGsとESG

ESGはビジネス投資のための言葉ですが、それに関連するのが最近、日本にも浸透してきた「SDGs」の概念です。

そもそもこの言葉は何かとか、この二つはどう違うのかと聞かれることがありますが、詳しくはリンク先の記事を読んでください。

 

SDGsとは?基礎をわかりやすく簡単にまとめました

 

簡単にまとめると:

「SDGs」は国連が2030年までの目標として定めた、持続可能な17の開発ゴールで、貧困や不平等をなくしたり、気候変動対策をするなど、世界中の誰もが取り組むべき目標が挙げられています。その一つは「平和と公正を。紛争や戦争のない社会を目指す」というもの。

短期的な利益追求だけを求め、社会的な倫理を試みない企業には投資しないという「ESG」はビジネス投資に関する分野なので一般人にはなじみがない概念ですが、「SDGs」は「世界中の誰も」が取り組むべき目標です。

「紛争や戦争のない社会を目指す」ために私たちができることには、たとえば「ESG観点から紛争を行う国へのビジネスをやめる」企業を支持したり、そうしない企業にSNSなどではたらきかけたり、ボイコット・不買運動などの消費行動で影響を促すことがあります。

今回、ロシアでのビジネスを続けると発表したユニクロに対するボイコット運動は、国際的にビジネス展開をするユニクロにとって、売上が落ちるだけでなく、ブランドイメージを失墜させる結果にもつながりかねません。

母国日本では多くが愛用し、学校の制服に使われるほどになった国民ブランドですが、日本国内でも小さいながらボイコットの声が出始めたことは「SDGs」の理念が広まっている証でもあるように感じました。

 

戦争をやめさせるためにできること

戦争をやめさせるために外国に住む一般市民ができることは限られています。戦争反対デモに参加したり、国連UNHCRのウクライナ支援などへの寄付をすることも一つの方法です。

そしてここで見てきたように、自国の政府や企業にロシアへの経済制裁を行うべく、SNS発信やボイコット運動などで働きかけることにも効果があります。イギリスでもたくさんの一般人がロシアにウクライナ侵攻をやめさせるための発信や取り組みを行っています。

このような世界中の努力が実を結んで、一日も早く紛争が終わるように願ってやみません。


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